賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 42
賃上げ取り組み事例

有限会社真生包装

ウェブロール用包装資材(段ボール、プラスチック、ベニヤ製品等)の製造・加工・販売およびフィルムスリット加工

2024/3/29

会社を支えてくれる社員に賃上げで応える
賃上げが社員の成長を促し、会社の利益向上に貢献する好循環を実現

会社存続の危機を救った社員の献身的な働きぶりに会社は最大限の賃上げで応える。
賃上げと面談の工夫により社員の成長を促す。

company 企業データ
  • ●代表取締役:後藤 常人
  • ●本社所在地:愛知県あま市
  • ●従業員数:35名
  • ●設立:1976年
  • ●資本金:300万円
  • ●事業内容:ウェブロール用包装資材(段ボール、プラスチック、ベニヤ製品等)の製造・加工・販売およびフィルムスリット加工
company

小さな改善の積み重ねがあってこその賃上げ

真生包装という会社の業務は、決して華やかなものではない。全国の販売店の店頭に並ぶさまざまな商品、たとえば食品、生活用品、電気製品、雑貨……そのすべては、商品が汚れたり、水分によって劣化しないよう、きれいに「包まれて」いる。
同社は、主役である商品を「包む」ためのパッケージ資材などを専門に取り扱っている。脇役といえばそのとおりだが、主役である商品が消費者の手元に届くまでの間、その品質を劣化させないためには、必要不可欠なものだ。パッケージ資材を商品のサイズに合わせて細かく裁断(スリット)したり、パッケージ資材を保護するための円形のプラスチック製保護材の製造などが、同社の主たる業務だ。
2015年に経営上の判断ミスが原因で迎えてしまったという会社存続の危機を、社員たちの献身的な働きぶりもあって乗り越えた。そんな社員たちの頑張りに、会社はどのように応えることができるのか。社長である後藤常人さんの脳裏にまっ先に浮かんだのは、「社員が毎日を楽しく過ごせる職場にしたい」だった。そのためには、現在の作業内容を見直し、社員の負担を軽減する方策を講じることと、社員の頑張りに報いるために賃金を引き上げることの2つが必要との結論に至った。
そこで同社は、業務改善助成金を活用して、材料の樹脂ペレットを円形のプラスチック製保護材に仕上げる射出成形機の主要な装備を更新。同機の最終工程にロボットも導入し、また、10年来使ってきたメインの機械設備数台の装備も刷新して、できるだけ社員の労力負担を軽減し、かつ労働時間も短くすむように改善を重ねてきた。そういった、一つひとつの改善の積み重ねによって、生産性の向上と結果的な賃金アップが叶ったのである。

経営状況が苦しい中にあっても、最大限の賃上げを

コロナ禍の影響により、2023年度の経営状態は非常に厳しい状況だった。そのような中であったにもかかわらず、同年4月には、正社員16名の賃金を平均8%アップ。また、時給制だったパート社員4名を月給制に昇格させたことで賃金が平均13%アップした。続けて、同年10月には、時給制のパート社員10名の時給を、50円引き上げた。
さらに、これらの賃上げに加えて、物価上昇による社員の生活不安の解消のために、2023年7月から9月の3か月間は、全員に「物価手当」を支給した。
なぜ、経営状況が苦しい中にあっても、ここまでの賃上げを断行するのか。その問いに、後藤さんは「やはり、過去の倒産の危機を、不平不満を漏らすことなく、黙々と日々の仕事に打ち込んで、会社の立て直しに協力してくれた社員に対して、できる限りのお返しをしたい」と話してくれた。
賃上げの結果、社員らはますます仕事に集中してくれるようになっただけでなく、新規事業への提案も活発にしてくれるようになった。賃上げは社員の成長を強力に後押しすることにも繋がったと、社長の常人さんに笑顔がこぼれた。

社員の成長を促す「面接」の工夫とは

経営の舵取りは、社長の常人さんの両腕に委ねられているが、総務を担当する妻、和子さんの経験や考え方が、会社へ大きな好影響を与えているという。
同社では、3か月ごとに社員全員と個別に面談を実施しており、面談では、30項目にも及ぶ緻密な「評価シート」に基づいて、社員自身が現在どのように会社に貢献できているのか、これからどのように貢献できるのかなどを明確にする。
この評価シートは、和子さんが、自身の教員経験をもとに発案したものだ。社員は評価シートを活用した面談を通じて、自身の現状と目標を明確に認識することになる。これにより、社員の意識改革、日々の仕事への向き合い方が改善し、ひいては会社の利益向上にもつながっている。
「当社では、社員の幸せと成長を追求し、時代の変化に柔軟に対応する経営構造を構築しています。賃上げはそのための手段であり、社員一人ひとりの生活の質の向上と企業の持続可能性の両立を目指しています」とのアピールが、けっして大言壮語ではなく感じられる。