賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 31
賃上げ取り組み事例

株式会社ダイワコーポレーション

営業倉庫業

2024/1/24

中堅層の定着を目指し、定年再雇用者の処遇を大きく引き上げ

経験豊富な人材を強みに物流倉庫業を営む同社は、中堅層の定着を目指し2023年3月に定年再雇用者の給与を約15%引き上げ。併せて全正社員の給与テーブルに一律5,000円を上乗せした。

company 企業データ
  • ●代表取締役社長:曽根和光
  • ●本社所在地:東京都品川区
  • ●従業員数:250名(パートを含む)
  • ●設立:1951年
  • ●資本金:9,000万円
  • ●事業内容:営業倉庫業
company

新たな人事制度の導入と報酬制度の整備を実施

通信販売の普及に伴い、進化が求められている物流業界。物流倉庫業のプロフェッショナルとして創業72年を迎えたダイワコーポレーションは、東京・神奈川・埼玉・千葉の営業所29カ所を拠点に、倉庫管理業(商品保管・荷役業務)、倉庫賃貸業、物流コンサルティング、物流業務の請負を行う。同社もまた、これまでの常識にとらわれない新たな賃上げの取り組みを始めている。
同社は、2023年4月に定年再雇用者向けの新人事制度を導入した。役職者は定年前の年収を維持、非役職者の基本給も定年前の8割に引き上げる等、4階層の等級を設け報酬制度を整備した。
さらに年1回の昇給・昇格ができる評価制度も適用することにした。これにより、再雇用社員の給与は約15%増となる。これは、同社が強みとする「経験豊富な人材」である中堅層の定着を目指すもので、キャリアを積んできた人材を大切にしたいという経営者の思いが根底にある。
併せて、全正社員の給与テーブルを一律5,000円アップした。これまでは、2022年に「物価高ファイトファンド」と銘打ち、社員一律7万円、パート社員一律3万円の特別賞与を支給したり、「コロナファイトファンド」を支給したりと、毎年一時金という形で利益を還元してきたが、これを継続・恒久的なものに変えたいという意識から給与テーブルを引き上げることにしたという。

作業の自動化・省力化の取り組みと、顧客との価格交渉を進める

同社は賃上げを継続的なものとするために、まず業務の効率化に着手した。それまでの倉庫内作業の多くは人力に頼っていたため、作業量に限界があったが、これを解決するために作業の自動化と省力化に取り組むこととした。同梱書類の各種を順に揃えるアッセンブリーと梱包は、複数人のパートが手作業で行っていたが自動丁合機・梱包機を導入することで省力化を実現。また、商品棚を電動移動させることでフォークリフトの通路を減らせる自動ラックを導入し倉庫内の商品保管量を増やし、バーコード管理システムの導入で作業ミスを削減する等、業務の効率化を実現している。
これと並行して顧客との価格交渉を開始した。同社が扱う商品は多岐にわたり、例えば、繊細な扱いを要する精密なもの、温度・湿度の管理が求められるもの、さらには専門知識や作業ノウハウを必要とするもの等さまざまだ。そうした異なる物品を扱うには、それぞれに資材も機材も人材も最適化しなければならず、かかるコストは一律ではない。そこで、保管・加工・輸送の各工程のコストを精査、価格の見直しを実施し、顧客ごとに価格交渉を始めた。お客様に対して業務の内容やかかるコストなどを丁寧に説明し納得頂いたうえで適正価格を収受することにより安定収益を確保し、「物価上昇に負けない継続的な賃上げ」の実現につなげていくためだ。

賃上げの継続で人材確保・定着を目指す

賃上げの実施は、何より社員の豊かな生活を優先する社長の考えに基づいている。定年再雇用者の新制度(人事・報酬)の導入も、「定年後の生活をイメージしやすくし、不安なく業務に専念できる」ことで、中堅層に定着してもらいたいという期待もあった。導入に際しては、40歳以上の社員を対象に「キャリアデザイン研修」を実施し、その中で説明するなどの工夫も行った。この研修により、マネープランを含めた60歳以降の人生設計を考える機会が与えられ、「自身のキャリアに責任を持つという自覚が高まった」と社員の好評を得ることができ、効果の手応えを感じている。
もちろん、取り組みの売りは再雇用制度だけではない。再雇用制度の改定に先立ち、2019年に全正社員の賃金制度の見直しを実施している。旧人事制度では、月例給を「基本給+役職手当」としていたが、役職手当を基本給に組み込むことにした。その後2度にわたる制度改定により社員の処遇を大きく引き上げている。
機械化・IT化が進んでいるとはいえ、まだまだ物流業界には人手が必要だ。取り組みの工夫と賃上げにより人材確保を進めてきた同社は、今後も人事制度の見直しとともに賃上げを継続し、社員満足度の向上を図り、人材の確保・定着につなげていく意向だ。