賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 27
賃上げ取り組み事例

今間メリヤス株式会社

ニット製品の開発・製造

2024/1/24

世代紡ぎ、技術を結び、未来に向けて、持続可能な会社を目指して

山形県の白鷹町にあるニット工場。ニット=セーターではなく、≪ニット=服≫という概念で、フルアイテム(アウター、ジャケット、ブルゾン、ワンピース等)を手がける。創業は1963年。創業当時からの伝統を守り続け、糸から完成品まで一貫して自社内で製造を行う。
織田社長が就任してからは4年。4年前、従業員は、定年退職し再雇用で働く社員も多く、概ね賃金は低かった。「このままでは、将来、この会社は続かない」との思いから、新規採用や賃金制度等の見直しに着手した。

company 企業データ
  • ●代表取締役:織田 真理
  • ●工場所在地:山形県西置賜郡白鷹町(本社:東京都渋谷区)
  • ●従業員数:18名
  • ●設立:1968年
  • ●資本金:900万円
  • ●事業内容:ニット製品の開発・製造
company

驚きからのスタート

織田社長が同社の代表取締役となったのは、2019年のことである。当時、取引先であった同社の事業を引き継ぐこととなったのがきっかけであった。
引き継いだ時の同社は、求人募集はしておらず、長期間勤務しているベテラン従業員に支えられていた。従業員の賃金を確認したところ、厳しい現実を目の当たりにした。
「このままでは、将来、この会社は続かない。」
まずは賃金の引き上げを実施した。これが織田社長の持続可能な会社作りの第一歩であった。

世代を紡ぎ、それを織りなすこと

持続可能な会社作りをするためには、ベテランから若手への“受け継ぎ”が欠かせない。しかし、継承する若手がいない。そのため、求人募集も開始。専門性を身に付けて戦力になってもらうため、その期待に見合った初任給とした。手に職を付けたいという向上心のある人や経験者からの応募があった。地域の平均的な賃金よりも良いという声もあり、賃金の引き上げ効果を実感した。
以前は、50代以上のベテラン従業員しかいなかった職場も、20代~40代が増えて、職場の雰囲気も変わってきた。活気が出てくるとともに、柔軟な対応ができるようになってきた。

※地域別、業種・職種別、年齢別の平均的な賃金額はこちらから確認できます。

様々な情報にアンテナを張り巡らせ、各種支援制度を組み合わせて活用

ニット製品の製造業界は、他の業界と比べてあまり伸びしろが大きくない。そのような現状の中で、何ができるのかを織田社長は考え、生産性向上や会社の取組に資する支援制度がないか、商工会議所からの案内やインターネットに掲載されている情報に日々アンテナを張った。そして、国・地方公共団体が行っている支援策を知り、それらを組み合わせて活用した。
○厚生労働省が所管する「業務改善助成金」を活用して、賃金の引き上げとともに、編み機1台とリンキングマシン1台を導入。これにより、生産量が増加し、作業効率が向上
○厚生労働省が所管する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を活用して、東京本社と山形工場でメールにより共有していた在庫情報や発注書などの各種データを、クラウドで即時共有できるシステムを導入
○経済産業省が所管する「持続化補助金」を活用して、ジャパン・ベストニット・セレクションに出展し、企業PRを実施

技術を結び、繋げていくこと

「業務改善助成金」を活用して、リンキングマシンを増設したことは、生産量の増加、作業効率の向上のほかにも、思わぬ効果をもたらした。1台しかなかったリンキングマシンを2台にしたことで、ベテランと若手が一緒に作業をすることができるように。これが教育効果を生んで、技術の継承ができるようになった。導入時、そこまでは想定していなかったが、将来の担い手を育成できるようになったことが「一番の大きな効果だったのではないか」と織田社長。

持続可能な会社を目指して

手間がかかっても自社内で製造を行うこと、外部に委託せず、技術・ノウハウの習得をし続けること、また、目の行き届く製造、顔の見える製品、自信を持って提供できることを誇りとしている。長く愛用して頂くための満足度の追究を怠らない。
織田社長は、今後、もう少し賃金を上げていきたい、と言う。本当の意味での賃上げ効果は、短期間で明言することはできない、とも。長い目で見て、会社がきちんと存続していれば、プラスに働いたと言えるのではないか、ということだ。
今間メリヤス株式会社の基本理念の一つに
一、正しい雇用、ものづくり、商売を通じ、正しい社の在り方を証明する。
とある。
織田社長は、正しい社の在り方を証明するため、日々、奮闘している。

従業員の声

〇今間メリヤス株式会社 竹田さん
私は、会社で37年ほど働いていて、襟などのつなぎ目を縫うリンキング縫製等の製造の業務を行っています。リンキングを行うための機械は、製品によって使い分ける必要があります。以前までは、リンキングの機械の数が少なく、受注が集中した際に多くの製品を仕上げることに時間がかかっていましたが、リンキングの機械が追加で導入されたことで、以前と比べて製品を作るための時間が削減され、生産が上がりました。
また、生産のために機械をフル稼働していたため、若い世代の方にリンキングの技術を伝える機会もあまりなかったのですが、台数が増えたことによって、生産を行いながら、若い世代の方に練習してもらえる機会もでき、技術を伝えることができるようになったので、設備が追加で導入されたことによって、会社にとっても、未来の世代にとっても良い効果が出てくると思います。

〇今間メリヤス株式会社 安部さん
2022年の1月に入社しました。1年10ヶ月ほど勤めています。この業界で働くのは、この会社が初めてです。普段の生活の中でこの会社をよく見かけていたことや、3~4年ほど前にこの会社のニット製品を買ったことから、気になっていたこともあり、この会社で働くことにしました。業務としては、工場で作られたニット製品の始末糸の処理や、リンキング作業がしっかりされているかの検品などを担当しています。
この会社の良いところは、納期に間に合わせるために一生懸命仕事に取り組んでいるところです。製品によっては、作るのにかなり時間を要するものがあり、納期に間に合わせるといっても簡単なことではありません。それでも一丸となって対応しているところを、すごいと思っています。また、みなさん優しく、仕事においても協力的な姿勢であるとも感じています。