賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 22
賃上げ取り組み事例

株式会社モハラテクニカ

精密板金、アルミ溶接、レーザー加工、ステンレス溶接、製缶加工、各種治具設計製作、金属金型の設計・製作

2023/12/25

補助制度の積極活用による最新設備の導入により生産性を向上。賃上げや従業員の資産形成を推進し、信頼関係を構築する。

高度な金属加工の技術を有し、数年来業績向上が続く「株式会社モハラテクニカ」。2022年7月に正社員に対して3~4%の賃上げを実施し、2023年7月には同じく4%の賃上げを実施した。従業員の働くモチベーションも向上し、来年度はパート従業員の賃上げも予定する。

company 企業データ
  • ●代表取締役:茂原亮太
  • ●本社所在地:群馬県高崎市
  • ●従業員数:38名
  • ●設立:1974年
  • ●資本金:1,000万円
  • ●事業内容:精密板金、アルミ溶接、レーザー加工、ステンレス溶接、製缶加工、各種治具設計製作、金属金型の設計・製作
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長く働いてもらえる会社を目指し、2年連続の賃上げを実施

株式会社モハラテクニカは精密板金、アルミ溶接等の高度な技術を擁し、高品質なものづくり技術により「顧客満足」を得る製品を作ることを最重要方針としている。同社は昭和33年の創業以来、常に最新技術を導入し、高い利益を確保しつつ事業を拡張してきた。
同社は、令和4年7月、正社員に対し定期昇給以外に3%~4%の賃上げを行ったが、引き続き令和5年7月も正社員に更に4%程度の賃上げを行っている。その理由は、昨今の物価高を考慮し、従業員の生活の質を上げるとともに、安心して長く働いてもらえる会社にしたいという思いからだ。正社員の年齢層は20代、30代が半数以上、平均年齢は約37歳と若い。同社が有する最新技術を十分に生かすことのできる若い働き手を確保するためにも待遇面での配慮は欠かせないと茂原社長は言う。初任給は数年前から高めに設定しているが、一方で、それ以前に入社した中堅正社員とのギャップを均し、より公平感のある給与体系を構築するため、年齢給が上限に達している50歳以上の正社員に対しては、職能給(技術評価)を上げることで年齢給が下がる部分を補填し、手取金額が増えるよう調整した。更に、来年はパート従業員への賃上げも行う予定だという。加えて、同社は年4回(3、7、9、12月)、業績と連動して1カ月分のボーナスを支給している。これも人材の定着に効果があると茂原社長は語る。こうした賃上げを含む給与面の待遇を反映してか、募集時には5人から10人は常に応募があるといい、新たな人材確保の点においても効果が現われている。

複数の補助制度を活用し世界でも数少ない高度な最新機械を導入し利益向上を図る

今回の賃上げの原資を確保すべく、新型機械導入による生産能力向上・利益確保を図った。同社は数多くの機械を扱う技術が売りであるため、数年前の設備ではすぐ腐化してしまう。常に最新の動向を把握しておくことは次に進むべき方向を見定めるために不可欠であり、最新技術を使えるかどうかが業績にも大きな影響を与える。今回、経済産業省の事業再構築補助金とものづくり補助金を活用し、新規事業である半導体事業等に参入するための設備や、既存事業の生産性向上や技術開発に必要な設備を導入。そのうちの1台は世界でも60台ほどしかないという半自動式パネルベンダーであり、人の手をほとんどかけずに大型の金属板の複雑な曲げ、溶接などの精密加工ができる最新機械である。導入したもう1台はマシニングセンターで、複雑な多種類の切削加工を自動で行えるようになった。どちらも最新の加工技術による収益の向上が期待できる。
同社は新工場の建設も予定しているが、そこでも補助金を活用し、超精密な加工ができる最新機械を導入することを検討している。
積極的な設備投資により生産性向上を図り、それにより得られた収益によって賃上げを図ることにより、従業員が満足して働くことができる企業に成長していきたいという。

信頼関係が生まれれば賃上げは自然にできる

補助金を活用した積極的な設備投資によって業績は着実に伸びている。10年前、従業員23人で2億8,000万円の売り上げが現在は従業員40人ほどで8億6,000万円。1人あたりの生産性は年々向上してきた。最新機械導入等により向上した収益を賃上げ等により従業員に還元してきたが、茂原社長は「給与がよいからという理由だけで人は集まらない」とも言う。若い働き手は、その会社が世の中とどのように関わっているのかを見定めていると感じている。同社の<地域から信頼され、社会に必要とされる企業を目指す>という行動指針はそれに応えるものといえる。
また<全社員の物心両面の幸福の追求>という指針も掲げているが、その一環として、2023年7月から個人型確定拠出年金を契約している従業員の毎月の掛け金のうち5,000円を負担することにした。将来に備えた資産形成への協力だが、従業員のモチベーションが上がるだけでなく、更なる信頼関係が生まれているという。茂原社長は「人が育てば会社も育ち、それが自然に賃上げにつながっている」と語る。