賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 19
賃上げ取り組み事例

株式会社よかところ

生鮮食品小売業

2023/12/25

人手不足解消、従業員のモチベーション向上に向けて、業務改善助成金などを活用した賃上げを実施。

海に面し、みかんの産地として有名な地域の直売所として、新鮮な野菜や果物を中心に販売。地元の生産された野菜、果物のほか、鮮魚や手作りの加工品販売も行っている。

company 企業データ
  • ●代表取締役:鉢川 光秋
  • ●本社所在地:長崎県西海市
  • ●創業:1994年
  • ●従業員数:14人
  • ●資本金:130万円
  • ●事業内容:生鮮食品小売業
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人手不足を解消し労働者のモチベーション向上を図るため助成金を利用

(株)よかところはみかんの産地として有名な長崎県西海市の海に面した自然豊かな地域で農産物直売等の事業を展開している。野菜や果物を生産する地元の生産者が同社の生産者会員として登録し、同社に販売委託をする形で、新鮮な野菜などを直売所にて店頭販売するほか、直送販売、BtoBとしてホテルや学校給食等における食材販売などの事業も展開している。これらの幅広い業務を限られた従業員で対応する必要があったため、同社は人手不足や労働時間の長時間化に悩んでいた。そこで、ハローワークなどで求人募集をしたが、応募がない状況が続いていた。
鉢川代表は、この人手不足に悩む現状を変えなければいけないと考えた。そこで地元の商工会議所や社会保険労務士に相談したところ、業務改善助成金という賃金引き上げと設備投資による生産性向上を支援する厚生労働省の助成金があることを知った。同社で働く従業員や登録された生産者会員には地元の高齢者も多く、新しいことに挑戦することは不安であったが、鉢川代表はこの助成金を活用し、新たな設備を導入することで生産性向上や従業員の負担軽減、モチベーション向上を図ろうと考えた。鉢川代表にとって、補助金などの支援制度の利用は初めてであったため、社会保険労務士や申請先である長崎労働局の職員に相談しながら自力で書類を作成し、申請を実施。そして、申請が認められ助成金が支払われた結果、13名の従業員の賃金を50~120円引き上げた。

業務改善助成金とIT導入補助金の活用により生産性の向上を図る

同社は、業務改善助成金を活用して、直売所に自動硬貨釣銭機能付きPOSレジシステムを導入。販売情報を即座に記録・管理できるシステムを備えたPOSレジシステムの導入により、日々の売上集計作業に要する時間が半分に減少し、集計ミスも格段に減るなどの効率化が図られるとともに、硬貨の釣銭処理が自動化する自動硬貨釣銭機能により従業員の負担も軽減された。鉢川氏は、同システムによりインボイス制度への対応や、売上データを分析して売れ筋商品の把握等への活用もできると期待を込める。
特に自動硬貨釣銭機能について、従業員からの評価は高く、設備の導入前は、硬貨の釣銭処理において、お客様との認識相違によるトラブルに発展することもあったが、そのようなトラブルが格段に減少し、従業員が安心を感じられるようになったという。
高齢の従業員が多い同社では、POSレジシステムなどの新しい設備の扱いに慣れている人がおらず、導入当初は機器の使用に苦労した。しかし、鉢川代表自らが率先して機器を使ってみて、使用方法を従業員に説明するなど、積極的に行動したことにより、現在は従業員が機器の使用に慣れてきた。
また、同社は経済産業省のIT導入補助金も活用。ホテルや学校給食等への食材販売部門に新しい受発注システムを導入した。BtoBの事業者との取引であるため、見積書や請求書の作成等に多くの手間を要していたが、受発注システムの導入により多くの工程が自動化され、従業員の負担の軽減に繋がっている。
さらに、事業所の奥に各部門にまたがる形でスペースを確保し、業務用冷蔵庫と作業台を設置して配送に向けた作業を行うためのバックヤードを設け、各部門の作業のために必要な動線を確保するとともに、生産者会員向けに製品に貼付するラベルの自動印刷機を導入し、作業の効率化を図るなど、更なる生産性向上に向けた取組を行っている。

従業員が働きやすい職場環境を目指して

これら生産性向上に向けた新しい設備の導入に対し、従業員からは、釣銭処理や日々の集計業務が自動化されたことで業務が簡素化され、お客様とのトラブルへの心配も減ったことにより、精神的に楽になり、働きやすくなったとの声が挙げられている。
今後は、賃金の引き上げに加え、労働時間の短縮等の働き方改革にも取り組んでいくために、さらなる生産性向上を目指していきたいと語る。
今回賃金引き上げを実施したことにより、従業員からは月の手取り額が増えて嬉しいといった声があるなど、従業員のモチベーションアップに大きく貢献している。さらに、求人への応募があり、アルバイト1名を雇用することができ、課題であった人手不足の解消にも効果があった。
一方で、従業員の手取り収入が増えたことにより、いわゆる「年収の壁」の問題を感じるようになってきたと鉢川代表は語る。そこで、社会保険労務士を招いて、同社で働く従業員を対象とした「年収の壁」に関する勉強会を開催し、社会保険加入によるメリット・デメリット等について正しく理解してもらうような取組も行っている。
鉢川代表は、こうした取組を積み重ねることにより、従業員が働きやすい職場環境を実現し、今働いている従業員にこれからも働き続けてもらうとともに、新たな人材の確保に向けて取り組んでいきたいと語る。

従業員の声

自動釣銭機能付きPOSレジには助かっています!
釣り銭の計算が楽になり、間違いも無くなったので、釣銭を巡るトラブルもなく、お客さんへの対応が楽になりました。