賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 17
賃上げ取り組み事例

菊池建設株式会社

総合建設業

2023/4/10

大手並みの基本給賃上げで人材確保に取り組む

マンション、ビルの設計から施工まで手がける総合建設業。DXやITを積極導入して仕事の効率化を図り、さらなる人材確保の一環として、大幅な賃上げに取り組んでいる。

company 企業データ
  • ●代表取締役:菊池 俊一
  • ●本社所在地:東京都西東京市
  • ●従業員数:140名
  • ●設立:1980年8月
  • ●資本金:9,000万円
  • ●事業内容:総合建設業
company

利益の追求より人材確保を優先

同社はよりよい人材確保のため、特にここ数年で採用活動に力を入れ、基本給の見直しに取り組んでいる。中小企業は大手企業に比べて応募者の目に留まりにくいという判断から、大手建設業の新卒採用者の基本給を考慮し、2022年4月から、それまで191,000円だった新卒採用者の基本給を同水準の230,000円(施工管理職/大学卒22歳)に引き上げた。
基本姿勢は、利益の追求よりも、人材確保を優先するということ。菊池社長は「賃上げはあくまでも先行投資という考え。原資は、上向きの業績からではなく、採用した人材が生み出してくれるものと期待している」と語る。
後述の建設業における時間外労働時間の上限規制への対応を実施するとともに、基本給のさらなる賃上げに向け、検討を続けていく。

DXで作業の効率化を進める

先行投資の対象は人材確保に限らない。業務の効率化と生産性向上のため、DXにも先行投資を行っている。その取組のひとつが、大手企業も建設現場で使用している図面・現場管理ソフトの導入だ。建設現場で必要とされる膨大な図面・写真・検査記録などをクラウド上で一元管理し、タブレットで様々な操作を可能とするもので、現場で働く従業員の労力や作業時間の大幅な効率化を実現した。また、3DCADを導入して、設計・施工における不具合や無駄な工事につながるミスを防ぐための効率化も進めている。
さらに、会計・営業管理・土木原価・建築原価などを管理するための建設基幹システムを導入し、従業員間のデータ共有を図っている。2023年9月からは協力会社との契約書や請求書のやりとりなどもデジタル化する予定だ。
直行直帰の多い現場従業員の時間管理は、従業員に配布しているスマートフォンやタブレットから出退勤時間を入力することで自動的に給与へ反映される仕組み。現場からの報告も簡略化されるだけでなく、事務管理も効率化されている。他の業務の時間管理も同様にパソコンやスマートフォンから行っている。さらに、働き方改革のため、午後7時30分になると自動的にパソコンをシャットダウンする仕組みを取り入れている。

時間外労働なしで恒常的な賃上げを目指す

建設業界では、2024年の時間外労働の上限規制への対応が大きな課題になっている。これは同社にとっても同様で、いかに効率よく中身の濃い仕事をするかがますます重要になってくる。現場で無駄な作業をしない、確実な段取りを行う、物事を考える時間を積極的に作るなど、時間外労働を削減し効率よい仕事をする努力が必要だという。
同社の従業員の平均年齢は39歳であり、建設業界では若い年齢層が多くいる会社である。「建設業はやりがいのある素晴らしい仕事だし、中小企業には面白い仕事がたくさんある」と語る菊池社長。目指すのは、時間外労働に依存することなく、基本給だけでも従業員の暮らしが成り立つこと。そのための仕組み作りに力を入れることで、恒常的な賃上げにも繋げる考えだ。