賃金引き上げに向けた取組事例

CASE STUDY 14
賃上げ取り組み事例

株式会社アサダヤコーポレーション

食品製造業(食品ギフト・炊き込みご飯の素、レトルト食品他)

2023/3/20

巣ごもり需要の高まりによる業績アップと助成金活用による業務改善により、賃金を引上げ

料亭のこだわりの味を活かして食品ギフトや炊き込みご飯の素などを製造し、百貨店、おみやげ、ECなどにより販売している。

company 企業データ
  • ●代表者:浅田 久太
  • ●本社所在地:石川県金沢市南塚町
  • ●従業員数:約40名
  • ●設立:平成12年2月
  • ●資本金:1000万円
  • ●事業内容:食品製造業(食品ギフト・炊き込みご飯の素、レトルト食品他)
company

業績アップを背景に賃上げ、人材確保に効果

アサダヤコーポレーションは、地元金沢で料亭などを営む浅田屋の関連企業だ。浅田屋に受け継がれる伝統の味と技を活かして、食品ギフトや炊き込みご飯の素、お惣菜などを製造している。コロナ禍における巣ごもり需要の高まりで一般家庭での消費が増え、業績がアップしたことを背景に、令和4年4月にパートタイム従業員の時給を30円引き上げた。また、パートタイム従業員以外の賃金についても、例年の定期昇給に額を上乗せする形で、給与総額を2.9%引き上げた。
今回の賃上げには人材確保の狙いがあった。パートタイム従業員の新規採用のためには、周辺企業に負けない賃金水準を設定する必要があったため、賃上げに踏み切った。この結果、数年ぶりにパートタイム従業員の採用に繋がっている。

助成金を活用して業務を効率化、有給休暇取得率も向上

業績アップが賃上げの原資となることはさることながら、生産性の向上も賃上げの原資となる。このため、アサダヤコーポレーションは、設備投資による既存事業の効率化に着手した。この取組に当たって活用したのが、業務改善助成金だ。業務改善助成金は、設備投資と賃上げを同時に行いたい同社の意向に合致したもので、助成金を活用し設備投資をする一方で、パートタイム従業員の時給を30円引き上げることを決めた。
また、業務改善助成金を活用して導入した機器は、ベルトシーラーとハンディプリンターだ。これにより、ビニール包装の密閉作業と商品を詰めた段ボールへの商品名記載の作業の効率が大幅に向上した。これらの作業は、従来、ベテランの従業員の熟練された手作業によるところが大きかったが、これらの機器の導入により、不慣れな従業員でも少しの練習で高い作業効率を上げることができるようになった。
さらに、ベテランの従業員に依存せずに効率的に業務を進めることができるようになったことで、従業員がお互いの仕事をカバーし合える環境が整ってきた。その結果、年次有給休暇の取得率が向上するという、うれしい相乗効果もあった。

更なる賃上げを目指し、積極的に従業員に還元

アサダヤコーポレーションが今後も賃金引き上げに取り組んでいくうえで課題となるのは、既存の施設・設備の更新だ。賃上げも大切であるが、長期的な経営の展望を踏まえると施設・設備の更新も欠かせず、困難な舵取りを迫られることもあり得る。そこで、同社は既存事業を会社の屋台骨と捉え、更なる業務改善や原材料価格の高騰を適切に価格転嫁したり、販路の拡大などを進める。また、事業全体のスクラップアンドビルドにも取り組む方針だ。
そのような中、同社は、基本給の引き上げだけでなく、利益を従業員に柔軟に還元できる賞与の増額も検討しているという。
浅田社長は、様々な取組を進め得た利益は、可能な限り積極的に従業員に還元するとともに、従業員がより働きやすい環境を構築したいと語る。